タイの首都バンコクから北北東に約130km進んだ山中に位置する「Nam Pha Pa Yai(ナムパパヤイ) Climbers’ Camp」は、岩場と宿泊施設、レストランが一体的に民間で運営されている場所です。
岩場は石灰岩で、フレンチグレードで6〜7台の30mルートが数十本開拓されています。メーンウォールとバットケイブ(Bat Cave)の2カ所のほか、完全初心者向けのスクールウォールが整備されています
週末はバンコク在住のタイ人クライマーでにぎわいますが、長期滞在する欧米人もよく見かけます。
ルートはエクスパンションボルトを採用していますが、女性オーナーのジョイさんが仲間とともに管理しているので比較的、安全面でも信頼が置けるでしょう。
タイ南部には、東南アジアのクライマーの聖地クラビがありますが、ナムパパヤイを訪れることで、同国の新たな魅力を発見できるはずです。
※2023年12月現在、メーンウォールは閉鎖中。
ロケーション
タイ中部サラブリー県の国鉄Kaeng Khoi(ケーンコイ)駅から、北東に舗装路を10km進行。さらに木々に囲まれた未舗装路を2kmほど山奥に入った場所にあります。
「一体どうやって見つけたんだろう」と思う、森の中の開けた一角が、キャンプ場になっています。
すぐ近くには、深さのある谷間の河川(幅二十数m)が通っています。
この川の対岸にあるのがメーンウォールです。数十mのジップラインが架けられているので、キャンプ所有のプーリー(滑車)を掛けて、渡ります。
キャンプ場からほとんど歩かずに到着するので、アクセス性は抜群に良いです。
一方、キャンプ場からトレッキングルートを10分弱歩くと、別の岩場Bat Cave(バットケイブ)に到着します。
トポはキャンプ場で閲覧できるほか、岩場にもラミネート加工されたものが残置されています。
メーンウォール
岩山の側面が、断崖のようになって、川べりから頂上まで続いています。
傾斜のそれほど強くない前傾壁から、スラブまで多彩なルートがあります。
タイ人クライマーの中でも強い人がよく挑戦しているのは、7b〜7cのルートになります。
最高グレードは8bです。タイ人クライマーはなかなか落とせなかったようですが、2022年に同国ユースクライマーが落としたとの話を聞きました。
週末に訪れるタイ人の常連クライマーが集まるのは、メーンウォールになります。
気の良い人が多いので、失礼のないよう一声かければ、きっと友人になってくれるでしょう。
マルチピッチルートも1本あります。

バットケイブ
キャンプ場から森の中のトレッキングルートを5〜10分歩くと、バットケイブに到着します。
この場所は、高さ数十mの岩山と形容するのが正確かと思います。
トレッキングルートから正面の岩山側面に、巨大な穴が開いており、出入りできます。内部は高低差数十mの空洞になっています。
コウモリが住み着いているので、バット(Bat)ケイブと名付けられたようです。
ルートは約20本で、岩山の内部にも外部にもあります。
グレードは4+〜7b+/7cまでそろっています。
ハングを抜けて、最終局面は垂壁になる6b+のルート「Politik Kills」などがあり、なかなか楽しめます。
メーンウィールに比べて、クライマーは少ないですが、味のあるルートがあるので一度は訪れてほしいです。

キャンプ場
レストラン
キャンプ場のレストランが、施設全体のレセプションとしても機能しています。
レストランは平屋建てで、屋根は何の植物か分かりませんが、日本の茅葺と似た作りになっています。
木製の机と椅子が数十席分あり、壁がないので開放的です。
オーナーのジョイさんが常駐していることが多いですが、誰もいないこともあります。
食事の時間帯は決まっており、朝食が午前8〜10時、昼食は正午〜午後3時です。
夕食は午後7時に一斉スタートで、各自がビュッフェ形式で、自分の食べたいものを取り分けます。
おかわりは可能ですが、料理はなくなり次第、終了です。
日中にクライミングしてお腹が空いていると思うので、最初に必要十分な量を確保すると安全です。

宿泊施設
キャンプ所有の既設テント(利用料金280THB)、土壁作りの家(利用料金450THB)、ツリーハウス(同)などから宿泊場所を選ぶことができます。
自分でテントやハンモックを持ち込んでも構いません。一人当たり100THBかかります。
最も設置数、利用者数ともに多いのは、キャンプ所有の既設テントになります。
竹製の高床式の枠に、屋根をつけたテントサイトが20カ所程度あり、アウトドア用のテントが設置されています。
中にはスリーピングマットが敷かれているほか、ブランケット一枚が用意されています。
東南アジアとは言え、山の中なので少し涼しく、扇風機がなくとも半袖、半ズボンで快適に寝られると思います。
テントは二重生地のメッシュ窓が付いているので、暑ければ開閉して調整しましょう。
タイ全土で毎年気温が下がる年末年始は、平地のバンコクでもジャンパーが必要です。ナムパパヤイでも厚着が必要でしょう。

シャワー、トイレ、洗面所
シャワーとトイレ、洗面所を備えた平屋の2棟が整備されています。
いずれも男女兼用です。
公共水道は通っていません。大きな貯水タンクがあり、詳しくは不明ですが、地下水を汲み上げているようでした。温水シャワーはありません。
なお、キャンプ場は夜間、全体的に真っ暗です。
テントからトイレに移動する十数mでも、明かりが必要なので、ヘッドライトなどを持ち込みましょう。
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大きな、たらいが置かれている洗い場が1カ所あります。洗濯物はここで、手洗いしましょう。

電気
山中なので電力会社の電線が届いておらず、ソーラー発電で賄っています。
蓄電池はありますが、食堂の照明は午後9時に消える決まりになっています。
夜は早寝して、翌日のクライミングに備えましょう。
日中は、食堂にマルチタップの延長コード1本があり、携帯電話などを充電できます。
ただし、充電したまま放置しておくと、誰かに取られかねませんので注意しましょう。
私はアイフォン の充電コードをつなげっぱなしにして、クライミングしていたら、なくなりました。
宿泊客に片っ端から声をかけたら、ある西洋人が「誰かが忘れていったと思った」と話し、自分のバッグから出して返却してきました。
アイフォン 本体の放置は厳禁でしょう。皆さんも気を付けてください。
予約
電話(+66 0891287849)もしくはフェースブック、公式HPのメールフォームを通じて、予約しましょう。
オーナーのジョイさんが対応してくれるのですが、言語はタイ語か英語のみです。買い出しなど、ほかにもキャンプ場運営の仕事があり、すぐには返信が来ないでしょう。
飛び込みで行っても、空きがあれば宿泊できます。
なお毎年4月は、ボルト点検や施設整備のため閉鎖されます。
アクセス
電車
バンコクから国鉄でサラブリー県ケーンコイ駅まで行き、バイタクやタクシーでキャンプ場まで行きます。
電車は2、3時間おきに運行しているでしょう。バンコクからケーンコイまでは約3時間かかります。
事前にキャンプ場に連絡しておけば、キャンプ場の送迎用ピックアップトラックがケーンコイ駅で待っていてくれます。2019年3月当時は、1人当たり250THBかかりました。
ケーンコイからキャンプ場までは18kmなので、20分程度で到着するでしょう。
バス
バンコクの北バスターミナル(モーチット)から、サラブリー県ケーンコイのバス停を目指します。バスの本数は分かりませんが、かなり多いので、30分も待たずに乗れるでしょう。
バンコク市街地から北バスターミナルまでは、BTS(高架鉄道)なら直通で行けます。
ケーンコイのバス停は、駅の近くにあります。
バス停からは、バイタクやキャンプ場の送迎トラックを使いましょう。
レンタカー
バンコク市内でレンタカーを借りて直接、キャンプ場まで行くこともできます。
この場合、ケーンコイ市街地のホテルへの宿泊も、選択可能になります。
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