タイ北部の古都チェンマイ近郊にある岩場「クレイジー ホース バットレス」には、200本以上のルートが開拓されており、同国内で第2の規模を誇ります。
ほとんどのボルトはチタン製で、ボルト間の距離も90cm〜2m程度と外岩としては短く、比較的、安全に登ることができます。
地元のガイド兼ジムショップ「CMRCA (Chiang Mai Rock Climbing Adventures)」が定期的にルートやアプローチ、水道の維持、補修に努めており、きれいな環境が整っています。
私は2023年11月半ばから2カ月間、チェンマイにアパートを借りて岩場に通い、存分に楽しみました。
歴史
タイでクライミングを普及させた、バンコクのクライマーでクライサック・ブーンティップ氏(現在クライム・セントラル・バンコクのオーナー)らが中心になり1998年、開拓が始まりました。
一方、CMRCAのオーナーで西洋人のジョシュ・モリス氏が1999年、チェンマイでの滞在を開始。クライマーでもあったため、岩場の開拓にも加わり2002年、CMRCAを立ち上げ、次第に開拓の中核を担うようになっていきます。(引用は下記リンク内のWHAT IS THE HISTORY OF DEVELOPMENT AT CRAZY HORSE?より)

CMRCAは現在、チェンマイ市内に「プログレッション」というジムを保有。地元タイ人をガイドとして育て上げつつ、クレイジーホースのアプローチや駐車法、トイレ、水道の整備にあたっています。

プログレッションの運営に加え、ガイド業やギアの貸し出し、コンペティションの開催など、事業はなかなかの盛況ぶりをみせています。
私は偶然、子供を連れたジョシュ氏と岩場で出会い、一緒に登らせてもらいました。当初は自ら開拓者と名乗らなかったので、チェンマイ在住のクライマーとしか思っていませんでした。
しかし後日、トポを眺めていたところ、ルート開拓者名によく「ジョシュ・モリス」という名前が出てくるのを見つけ、ローカルクライマーに聞いたところ、クレイジーホースの創設者と判明しました。
今もなお、現役で登っているようです。

アクセス
クレイジーホースは、チェンマイの市街地の東約35Kmにあるマエオンという地域にあります。
ほとんど一本道で、1137線をしばらく走った後、北方向の脇道に入り、未舗装の坂道を100m余り登ると駐車場に到着します。
チェンマイでバイクを借りて岩場に向かうのが、最も安いです。プログレッションで頼めば、ソンテウの往復送迎を手配してくれます。
何人かのグループで割り勘にできるなら、レンタカーも安く、快適になるかもしれません。
チェンマイ市街地のワロロット市場で乗合ソンテオを捕まえられるようですが、時刻表があるわけでもなく、旅行者が見つけるのは難しいと思います。公共交通はほぼ、皆無と考えた方が良いでしょう。
岩場の詳細、グレード
クレイジーホースは木々に覆われた小高い山で、頂上や周辺部のところどころに岩場がむきだした形状をしています。
敷地内の岩場は16カ所あり、それぞれ英語で「ハートウォール」「エアコンウォール」などと名前が付けられています。それぞれの岩場間は1〜20分ほどで歩いて移動できます。
駐車場からアプローチを1分ほど登った「メーンウォール」は、フレンチグレード5台が3本あり、初心者に最適。CMRCAのガイドツアーでもよく使われています。

エアコンウォールは、巨大な洞窟と周辺部を指すエリアで、洞窟内からの冷気で涼しく過ごせるため、名付けられました。6a+から7bまで幅広いグレードがそろっています。
クレイジーホースエリアには、最高グレードの8a+(長さ18m、ルート名The Horse Knows the Way)があります。
ほとんどのルートは60mで登れますが、ハートウォールの6a+(36m)など80mロープが必要な場合もあります。
マルチピッチのほか、洞窟内で沢登りもできます。沢登りはルートを見つけるのが難しいので、CMRCAにガイドを頼まなければならないでしょう。
トポ
プログレッションでトポを販売しています。価格は595THB(2024年1月現在)。スタッフによると、同年内に、紙の新版と電子版を発行するそうです。
コミュニティサイト「theCrag」でもルートの詳細(名前、グレード、長さなど)や位置を確認できます。
ただし、すべての岩場の写真がアップロードされているわけではありません。場所を特定できないルートがあるので気をつけましょう。
イベント
CMRCAは毎年12月、岩場の清掃活動を行っており、事前登録すれば誰でも参加できます。
私は24年12月17日に参加しました。午前中は地元のクライマーについていき、アプローチの階段の整備を手伝いました。
土砂が流れてステップが崩壊していたため、切り出した木や竹で流れ止めを作った後、大きめの岩を移動して、完成です。雨季に大雨が降って壊れるたびに、修理しているようです。
昼には無料の昼食を頂き、午後は3時間ほど参加者一同でクライミングを楽しみました。
CMRCA代表のジョシュ氏によると、同社スタッフが定期的に清掃活動を行っているほか、トイレや水道に使う水を大型タンクに補給しています。「ごみは自主的に持ち帰り、水がなくなったらCMRCAに連絡してほしい」と呼びかけていました。
