米作家ジョン・グリシャムが2001年に発表した小説です。
自身が幼少期を過ごした、アーカンソー州が舞台。1950年代の綿農家で暮らす、リューク・チャンドラーという7歳の少年を主人公に、物語が進行します。
リーガルサスペンスで絶大な筆力を持つグリシャムが、初めて法律以外をテーマに執筆しました。
あらすじは次のとおりです。
綿花を手作業で収穫していた時代。アーカンソー州の農家は、家族だけでは人手が足りないので、例年夏になると、丘の住民やメキシコ人を敷地内に住まわせ、共同で収穫に当たっていた。
1952年、チャンドラー家にやってきたのは、スプライル一家と、メキシコ人10人。リュークは彼らとともに収穫を始める。スプライル家の凶暴なハンク、美少女タリー、飛び出しナイフを隠し持つメキシコ人のカウボーイ、そして隣家に生まれた父親不明の赤ん坊ー。
リュークが見るべきでなかった事件とは。ハンクとカウボーイに生じた対立とは。収穫期を1カ月残しつつも起きた洪水の影響とは。
リュークの目線を通し、米南部の農民の暮らしが描かれる。
感想
リュークが綿花の収穫時期、数ヶ月間の間に、体験した出来事をいくつも、ちりばめて書いた、というような構成になっています。
サスペンス小説のように伏線が張られて、何らかの結末に至るわけではありません。
物語の半分くらいまでは、淡々とリュークの暮らしが描写され、エンターテインメント性に欠けます。ただし、中盤以降は、ある事件が起きるとともに、リュークが誰にも打ち明けられない秘密を握ってしまう、など目が離せない展開が複数続きます。序盤を乗り切ってしまえば、最後まで一気に読めるでしょう。
グリシャムらしく英文は簡潔で読みやすいです。個人的な評価(10点満点)は、ストーリー6点、英文10点。
私はTOEIC880点、英語の実務経験2年で、読了までの時間は1週間でした。
英文メモ
ハンクは街に出かけた際、山の住民がシスコ兄弟とケンカして負けたのを見て、シスコ兄弟に飛び掛かる。相手は3人いたが全て殴り倒し、動けなくなったにもかかわらず、角材を持ち出し、めった打ちにした。
翌日、シスコ兄弟のうち1人が死亡。保安官はチャンドラー家を訪れ、ハンクを事情聴取する。
リュークの祖父パピーは、綿花の収穫時期に作業員が減るのを懸念。3対1のケンカだったことを引き合いに出し、ハンクの勾留に反対する。
”Three against one, and there’s no way you can take him in for murder. No jury in this county’ll ever convict if it’s three against one.”
3対1だろ。殺人罪では引っ張れない。この郡区で、3対1(のケンカ)を有罪にした裁判員はいないんだから。
Three against one=3対1