クライミングチョークのおすすめ製品を、レビューとともに紹介したいと思います。
私のグレードは、リードで5.12b、ボルダリング3級ぐらい。チョークには特にこだわらず、カンプの製品を主に使ってきましたが、最近の価格動向を見ると、東京粉末など国産メーカーのコストパフォーマンスが高そうです。
いずれにせよ、チョークは消耗品。初心者の方はまず、欧米メーカーのスタンダード製品を使い世界標準を知り、他社製品と比べると、クライミングをより楽しめるはずです。
チョークについて
クライミングチョークの99%は、炭酸マグネシウムでできています。
同じ炭酸マグネシウムとはいっても、各メーカーにより生成方法が異なり、粒子の細かさや保湿力に違いがあり、フリクションに差が出ます。
各製品で共通するのは、汗止めとしての機能だけでなく、摩擦力に重点を置いて開発している点です。体操やウエイトリフティングでもチョークは使われますが、別物と言って良いでしょう。
私はあまり手汗をかかないこともあり、少し湿り気があるチョークが好みです。
初級者の頃はチョークを使わずに登っていたのですが、ある時、あるボルダーの課題(5級ぐらい)でスローパーを持てずに苦しんでいたところ、ジム仲間のアドバイスでチョークを使ったところ、難なく落とすことができました。
以来、ウォームアップを除いて、チョークアップするのが習慣になりました。
グレードの高い課題を、より楽に登ることができれば、トレーニングが楽しくなるので、ぜひチョークは使いましょう。
粉末タイプ
ロープクライミングをする人は、粉末タイプを買いましょう。
腰にぶら下げたチョークバッグに入れて、ルートの途中でチョークアップします。
ボルダーからリードに挑戦したばかりの人が、液体チョークだけでルートを登っている場面をたまにみますが、途中で手のひらからチョークが落ちてしまうので登りにくいです。
一方、粉チョークは不意にチョークバッグが押しつぶされるなどして、どうしても吹きこぼれてしまうのが欠点です。
ジムで登る場合は、粉がたくさん舞うと空気が汚れて、健康に悪い影響を与えかねません。
粉チョークは、チョークボールに入れて使いましょう。
チョークボールは開口部にドローコードがあり、補充できるものを選びましょう。私はカンプの製品を使っていますが、どのメーカーでも大差ないので、好みで選びましょう。
ドローコードが付いていない製品は、使い捨てになります。
外岩ならチョークボールは使わなくても大丈夫です。
液体タイプ
ボルダリングやジムクライミングで重宝するのが液体チョークです。
アルコールが配合されており、手につけた瞬間、乾いて白く固まるので、空気を汚しません。
ロープクライミングの際も、下地として液体チョークを手に塗ることで、粉末チョークを上から付けた時に落ちにくくなります。
どこのジムでもよく見かけるのは、べアールのピュアグリップです。松ヤニ配合で、とにかく摩擦力が高いのが特徴です。
ただし、松ヤニはグリップ力がある反面、落としにくいのが欠点です。
外岩では、ほかのクライマーのため、自分が登ったルートのチョークを落として帰るのがマナー。清掃しにくければ、ほかの製品を使いましょう。
ほとんどのジムは定期的に、ホールドを高圧洗浄するので問題ないのですが、一部施設が松ヤニ入りチョークを使用禁止にしているようです。
そんな時はマムートやペツルなど、松ヤニが入っていないチョークを選びましょう。
ブロックタイプ
石鹸のような固まりで販売されているのが、ブロックタイプです。
長所はなんといっても、チョーク自体に重さがあるので、飛散しにくいことです。
外岩でロープクライミングをする際、チョークバッグに手を入れて出す度に、どうしても風にあおられるなどして粉が飛散し、もったいないです。
チョークバッグを腰につけたまま、不用意に地面やジムの床に座ってしまうことも多いですが、その際はやはりチョークバッグが押し潰されて、粉が噴き出てしまいます。
このような時は、ブロックタイプを小さく割って、チョークバッグに入れ、粉末タイプと一緒に使いましょう。
粉の悲惨を抑えられると同時に、適度にチョークアップできます。
粉チョーク比較
ブラックダイヤモンド
ブラックダイヤモンドの粉末チョークは、スダンダード「ホワイトゴールド」、無添加「エコゴールド」、上位モデル「ブラックゴールド」の3種類を軸に展開しています。
ホワイトゴールド
ホワイトゴールドは税込1650円(200g入り=2023年3月現在)。ブロックチョークも展開しているので、同一製品でそろえたい人に適しているでしょう。
1g当たり8.25円になります。
私は1パック使いました。少ししっとりして、手に馴染むような感覚があり、しっかりとフリクションがあります。
指先に取って、擦り潰すと、ざらざらとした抵抗感がややあります。
完全に粉末ではなく、ほどよい固形チョークが混ざっているので、外岩でも使いやすかったです。
定番メーカーの定番品なので、まずはこの製品を買い、他メーカーと品質を比べるのが良いのではないでしょうか。
ブラックゴールド
ブラックゴールドは、ホワイトゴールドチョークに、炭酸マグネシウムアプサライトを配合した製品です。
ブラックダイヤモンドによると、吸湿力が2倍になり、グリップ力が増すのが特徴です。
サポートアスリートのアダム・オンドラを使った動画で、広告に力を入れています。コンペ向けという印象でしょうか。
価格は2,860円(200g入り=2023年3月現在)。最も大きいのは300gパックで、4510円。両製品の1g当たりの価格を比べると、14.3円から15.0円に高くなるようです。
普通は容量が増えるに従い、1g当たりの単価は下がり、お買い得になると思うのですが…。
カンプ
ベルベットチョーク
カンプの粉末チョークは、「ベルベットチョーク」と「チャンキィチョーク」の2種類あります。
ともにチョークの品質は同じで、上位モデルは存在しません。
ベルベットは粉末、チャンクはある程度、砕かれたチョークが入っています。
東京で通っていたジムに置いていたので、私は好んで買っていました。
使い心地は、ブラックダイヤモンドの「ホワイトゴールド」と、ほとんど変わらないといって良いでしょう。
手によく馴染み、指に粉が長く残るような印象でした。
主要ギアメーカーの中で最も大きい部類となる、450gパック(3080円=2023年3月現在)を用意しているのが特徴。
1g当たり6.8円。少し前はもっと安かった気がするのですが…。まずまずの価格といったところでしょうか。
5.12台でリードを楽しむなら、十分な性能です。私は、ウォームアップ用の低グレードルートには、少しもったいないと思いながら、使っています。
カンプの公式HPによると、良質の粉を使っているため、均一に指をコーティングすることが可能。肌になじみやすいので、チョークアップが早くなり、高難度の課題に適している、としています。
ペツル
パワークランチ
ペツルは、粉末チョーク「パワークランチ」、粉末と固形物を混ぜた「パワークランチボックス」を展開しています。
ともに原材料は一緒で、100%炭酸マグネシウムを使っています。添加物を加えた上位モデルは存在しません。
価格は200g入り「パワークランチ」が1100円(2023年3月現在)。1g当たり5.5円となります。
ペツルは、高品質ながら高価格なギアが多いメーカーです。チョークの品質もブラックダイヤモンドやカンプと変わらない印象があるので、現在は値頃感があります。
ただし、各メーカーは23年に入り、シューズなどギア価格を軒並み値上げしているのが現状。
ペツルのチョーク価格も、いつまで現状維持となるか分からないので、気になる方はストックしておきましょう。
GRASP
コスパに優れる国産チョークが「GRASP」です。
日本を代表する世界的クライマー・小山田大氏(鹿児島県出身)の知見を生かして開発。「レギュラー」「ハイグリップ」「頂シリーズ」など、グレード別に数種類を展開しています。
開発元は、グリーンテクノ21(佐賀県)。同社HPによると、もともとスポーツ用滑り止め材を作っており、国内トップの生産量を誇るといいます。
レギュラー
価格は粉末チョークのレギュラータイプが、400g入りで1100円(2023年3月現在)。1g当たり2.7円と、欧米メーカーと比べ、断トツに安いです。
国内生産で輸入コストが掛からないため、価格を抑えられているのでしょう。
この単価なら、外岩に持って行き、クライマー仲間に分け与えても、もったいないと感じることはありません。
リードで、登る量を増やしてトレーニングする際に、活躍しそうです。
ハイグリップ
ハイグリップは「ウェットコンディション」(400g入り、1500円)と「ドライコンディション」(同)の2種類。
ウエットは手汗や湿気の吸収力に優れ、ドライは乾燥した環境でフリクションが増すように添加物が加えられています。
頂シリーズ
グラスプの最上位製品が「頂シリーズ」です。原材料に、よりきめ細かな炭酸マグネシウムを使い、添加物を配合しています。
「ニュースタンダード」(280g入り、1800円)は、インドア・外岩、リード・ボルダーとあらゆる状況で、高いグリップ力を発揮することができます。
「スーパーグリップ」(同)は、吸湿性に優れたモデル。夏場や、岩場が湿っている時に高い性能を発揮します。
1g当たりの価格は6.4g。ブラックダイヤモンドの定番「ホワイトゴールド」よりも安価なので、機会を見て試したいです。
アマゾンで取り扱いがあるので、買いやすいでしょう。
東京粉末
TOKYO POWDER INDUSTRIESのブランド名で、世界的にチョークを販売している国産メーカーです。
東京五輪女子複合で銀メダルを獲得した野中生萌ら、アスリートのサポートにも力を入れています。
同社HPを見ると、23年3月現在で10種類のチョークを展開しています。私のような一般クライマーからすると、種類が多くてどれを選んだら良いか迷ってしまいます。
とりあえず購入するとしたら、次の2製品が良いでしょう。
PURE
同社のスタンダードモデルは「PURE」。330g入りで1430円。1g当たり4.3円となります。
水酸化マグネシウムから生成した、高純度の炭酸マグネシウムで構成されています。
水分量が多く保たれるので、乾燥気味の手と相性が良好。粉の粒子が小さいので、チョークが指紋に入り込み、ホールドとの設置面積を増やすことができます。
PURE BLACK
一番人気は、全天候型ハイフリクションチョーク「PURE BLACK」です。
炭酸マグネシウムの粒子同士をつなげる加工を施しており、適度な湿度が持続するので、摩擦力が落ちません。
手指への、のりも良く、素早いチョークアップが可能。雨上がり、真冬の乾燥機、インドア、外岩いずれの環境でも、高い性能を発揮する、としています。
「この製品に変えてから、スローパーがよく止まるようになった」など、良い評判を多く聞きます。
価格は330g入りで1870円。1g当たり、5.6円となっています。どちらかというと高難度ルート向けのチョークですが、欧米メーカーの製品より安いです。
上位モデルにもかかわらず、私のような中級クライマーでも買ってみようかな、と思わせてくれる単価が魅力です。
こちらもアマゾンで購入できます。
液体チョーク比較
べアール
ピュアグリップ
価格と性能のバランスが、とても良い液体チョークです。
原材料は炭酸マグネシウム。松ヤニ配合なのでフリクションが良く、とにかくホールドが止まります。
アルコール配合で、手になじませた瞬間から乾き始め、20〜30秒でチョークアップが完了します。
手汗をかいても落ちにくく、ジムの高さ14mほどのルートなら、3分の2くらいまでは、摩擦力を維持してくれます。
250ml入りボトルが、1540円。
マムートの「リキッドチョーク」(200ml、1980円)、ペツルの「パワーリキッド」(200ml、1595円)と比較すると、コストパフォーマンスの良さが、際立ちます。
ジムでの使用率は、No.1でしょう。私は何本もリピートしています。
ただし、松ヤニは岩場やホールドにこびりつくので、使用が禁止されている場合があります。その際は、マムートやペツルのチョークが良さそうです。
B・S GROUP
PD9
手指や衣類が白く汚れない、国産の液体チョークが「PD9」です。
生産元は広島の会社で、もともとはポールダンサー向けに滑り止めを開発。2010年代後半から滑り止め市場で存在感を高め、2023年3現在はポールダンス、クライミングのほか、バスケットボール、ウエイトリフティング向けの4製品を展開しています。
原材料に、金属粒子のアルミナを使っているのが最大の特徴。汗や水分を吸収し、グリップ力を高めます。
一般的なチョークに使われる、マグネシウムのほか、松ヤニを一切使っていないので、衣類のほかホールドも白く汚れません。
使い方は簡単。同社HPによると、手のひらに2、3滴を垂らすだけで、しっかりと効いてくれると説明しています。
結構ジムでも使用率が増えている、という印象です。
私の仲間数人も、ジムで5.12台の限界グレードに挑戦するなら「PD9」が一番だ、と好んで使っています。
ただし、私の手には合いませんでした。もともと乾燥しがちな手だからでしょうか。1本購入したのですが、ほとんど摩擦力を感じられませんでした。
一方、手についたPD9は水洗いで簡単に落とせます。少ない使用量でもグリップ力が出る仕様なので、ボトルもコンパクトで持ち歩きやすいです。
私と相性は良くなかったとはいえ、夜勤前のジムトレーニングなど手を汚したくない場面では活躍してくれました。飲食業の方などにも重宝するのではないでしょうか。
まとめ
22〜23年春にかけて、欧米のメーカーは軒並み、ギア価格を値上げしています。インフレや円安が進んでいるので仕方ないでしょう。一方、国内メーカーは価格維持に努めている姿勢が見え、ハイグレードのチョークでも、欧米のスタンダード製品より1g当たりの単価が安く、お買い得感があります。
私は現在、練習用にグラスプ「レギュラー」、本気トライ用に東京粉末「ブラック」を狙っています。