クイックドローを構成するカラビナのゲートに、ストレート/ベントゲートを選ぶ理由として、カラビナのノーズを真っ平らに加工した「キーロックシステム」が、ほとんどの製品で標準装備になっていることが挙げられるでしょう。
キーロックシステム
カラビナのノーズが真っ平らであれば、ハーネスのギアループに引っ掛からないので、迅速にクイックドローを取り出してハンガーに掛けられます。
クイックドローの回収時にも、ハンガーに引っ掛かることがないので、作業がはかどります。
ノーマル式と呼ばれるノーズは、先端がかぎ状で、凹みがあります。キーロックシステムが開発される前、主流だった構造です。


キーロックシステムは、ワイヤーゲートのカラビナにも搭載できるのですが、構造が複雑で、価格が高くなりがちです。
キーロックにするため特殊な加工を施した結果、カラビナのノーズ部分の厚みが増し、ボルトへのクリップ時、ハンガーの穴に差し込みづらい、といったデメリットが発生することもあります。
ペツルの「スピリットエクスプレス」(11cm/93g、17cm/100gともに税込3,575円)は、ハンガー側にストレートゲート、ロープにベントゲートのカラビナを使いつつも、ワイヤーゲート並みもしくはそれ以上に軽量化を図ったモデル。当然キーロックシステムを採用しています。
価格は高いものの、ワイヤーゲートのカラビナのように、不用意に横向きになって強度低下を招くリスク(前回の記事参照)も減ります。野口啓代さんや安間佐千さんらトップクライマーが使っていることで有名です。一度購入したら長期に渡り、他のモデルに買い替えたくなることはないでしょう。
ブラックダイヤモンドの「ホットフォージ クイックドロー」(12cm/103g、16cm/107g、税込2,060/2,200円)も、同様にキーロックシステムかつ、安定性の良いストレート/ベントゲートで構成。ペツルより安価で、コストパフォーマンスに優れます。
カラビナの大きさ、形状、重量
適度に大きさがあった方が、握りやすく、ゲートの開口部も広くなるので、ロープを入れやすいです。
ペツルの「ジン アクセス」はロープ側カラビナのゲート開口幅が27mm 、「スピリット エクスプレス」の同ゲート開口幅は25mm。
シングルピッチ用に使うなら、この辺りの大きさを目安にすれば良いでしょう。
マルチピッチ、アルパイン用は軽量化を図るため、小型のカラビナで、ワイヤーゲートを使った製品が有利です。
ペツルの「アンジュ フィネス」(63g〜78g/税込3,960〜4,235円、スリングの長さやカラビナの種類による)が高級モデルの一つになるでしょう。荷重が縦軸方向に掛かるようデザインされており、ロープの動きに追随して回転しやすいというワイヤーゲートならではのリスクを減らしています。
ブラックダイヤモンドは「オズクイックドロー」(12cm/66g、同2,640円)を販売しています。
ドッグボーンの長さ、幅
メーカーによって12cm、17cm、25cmなどいくつかのサイズが販売されています。
リードでクイックドローを設置する際、ロープの屈曲部が大きくなると抵抗が増し、引き上げにくくなるのでクリップに支障が出ます。
垂壁から前傾壁に入る際、このような場面に出くわすことが多いです。
長いクイックドロー使うことで屈曲部の角度を緩めることが可能です。まずは17cmを中心にそろえれば、いろいろなルートに対応しやすいはずです。
2つのクイックドローを連結すれば、もっと長くなります。
長さのほかに、横幅も考慮したい要素です。
シングルピッチ用のドッグボーンなら耐久性を考慮し、太いモデルを選んだ方が良いです。幅は18mm~27mmcmが目安になるでしょう。
幅が細いものも売られていますが、ねじれやすく、カラビナが自然にひっくり返ってしまう製品があるので注意が必要です。
マルチピッチ、アルパイン用なら、10mm程度にすれば軽量化につながります。ペツルの「アンジュ フィネス」なら、ドッグボーンが細いにもかかわらず硬く、ねじれにくい素材を採用しており、快適に使用できるでしょう。