クライミングではリードやマルチピッチの際、セルフビレイ(自己確保)コードが必要になります。
例えばリードでシングルピッチのルートを登った際、終了点では2カ所以上の支点を使い、万が一、どちらかが壊れても、グランドフォール(墜落)しない措置を講じます。
具体的には、1つの支点にはロープ、もう一方の支点にはハーネスに装着したセルフビレイコードをかけます。
セルフビレイコードは、スリングと安全環付きカラビナで自作できます。
外岩でロープクライミングを楽しむなら必須の装備なので、ぜひひとつ作っておきましょう。
2010年代後半からは、ダイナミックロープを使った衝撃吸収能力のある製品が普及し始め、安全性の高さで支持を得ています。
自作するよりも高価になるので自身の使用頻度を踏まえて、購入を検討すると良いのではないでしょうか。
なお、セルフビレイについては、ギアを熟知し、責任能力のある人から教わりましょう。
使用場面
シングルピッチでリードした場合を例に挙げます。
クライマーが終了点についた後、ロワーダウンのための準備作業をする際に、セルフビレイコードを使います。
ちなみにロワーダウンのセットは、外岩でロープクライミングをする際の基礎的な知識のひとつです。
【手順】
①終了点の1つの形としては、左右それぞれ1カ所にボルトが打たれ、Uの字状にチェーンが掛けられ、チェーンの中央にロワーダウン用のカラビナ(開閉できない)が2枚ついています。
②クライマーは終了点で、カラビナもしくはボルト、チェーンのいずれかに、クイックドローを設置。ロープをかけて、ビレイヤーに登り切った旨を伝え、テンションをかけてもらいます。
③クライマーは、もう一方のボルトにセルフビレイコードをかけます。ロープとセルフビレイコードの2つで、自らを確保した状態になります。
④ロープを常に自分に結びつけて自己確保した状態を維持しながらも、ロープを一部ほどいて、ロワーダウンのためにカラビナに通す「ロープの掛け替え」を行います。
⑤クライマーは、掛け替えたロープに荷重して安全を確認。クイックドローを回収するとともに、セルフビレイコードもボルトから外し、カラビナを通ったロープのみにぶら下がった状態になります。
⑥クライマーは、ビレイヤーに合図しロワーダウンします。
これら一連の流れを見ると、セルフビレイコードを使うことで、常に2カ所の支点で自己確保が可能になることが分かるかと思います。
作り方
ナイロンスリング(60cm)1本と、変形D型の安全環付きカラビナを用意します。
ナイロンスリングのつなぎ目が、カラビナに当たらないよう調整し、カラビナにクローブヒッチで結びます。
これでセルフビレイコードは完成です。
ハーネスのタイインループに、ガースヒッチで装着します。

身長の高い人は、60cmだと短いかもしれません。終了点で自己確保した時に、壁との距離が近くなり、作業しづらくなります。
スリングの基本の長さは60cm、120cm、240cmですが、80cmなども売っているので試してみると良いでしょう。
ペツルの安全環付きカラビナ「スピリット スクリューロック」は、ゲートがロックされたかどうかを示す赤色のインジケータが付いており、安全性が高いので、オススメです。
>>>【クライミングギア】ペツルの安全環付きカラビナ「スピリット スクリューロック」 高精度で信頼できるロックシステム
安全性を高めた既製品
ペツルのコネクトアジャスト
ペツルの「コネクトアジャスト」は、アンカーで自己確保するためのランヤードです。
ダイナミックロープ製のため、ナイロンスリングよりも衝撃吸収性があります。
ランヤードには金属製の調整器が付いており、全体の長さを15〜95cmの範囲で簡単に変えられます。
定価は6,490円(2022年10月現在)。
メトリウスのPAS(パーソナルアンカーシステム)
PAS22は、ダイニーマ製スリングのループをいくつか組み合わせた、全長96.5cmのソウンスリングです。
セルフビレイの際、PAS中間部のループを、末端のカラビナにかけることで、全長を短くできます。
マルチピッチで、ビレイポイントを構築することもできます。
定価は税込4,400円(2022年10月現在)。
ダイナミックPASは、PAS22の素材をダイナミックロープに替えて作った製品です。
衝撃吸収力が高まるので、支点への負担が減ります。ビレイポイントの構築には使えません。
定価は税込4,400円(同)。ペツルのコネクトアジャストより安価になるのが、アピールポイントでしょうか。
好日山荘のオンラインショップが、マムートやサレワのスリングを取り扱っています。
さまざまな商品のセールやポイント還元を展開しているので時折、チェックすると良いかもしれません。